「鍋なんて、どれも同じ」 と思っていませんか?
もしそう思っているなら、あなたは人生で損をしています。 スーパーで買った普通の玉ねぎが、驚くほど甘くなる。 安い豚肉が、ナイフがいらないほどホロホロになる。
そんな魔法のような体験ができるとしたら、それはもう単なる「鍋」ではありません。
今回紹介するのは、フランス生まれの調理器具、 STAUB(ストウブ)の「ピコ・ココット ラウンド」 です。
私はこれを、食材の旨味を強制的に引き出す「精密な調理装置」 だと思っています。 単なるキッチン用品としてではなく、 「一生使えるギア」 として選びたい。
そんなガジェット好き、こだわり派のあなたに向けて、 この黒い塊の魅力を徹底的にレビューします。
1. STAUB(ストウブ)は料理を科学する「装置」である
【このセクションのまとめ】
・ストウブはただの鍋ではなく、旨味を循環させるシステムを持っています。
・密閉性が非常に高く、食材の水分を逃しません。
・この構造が、誰でもプロ級の味を出せる秘密です。
まず断言します。 ストウブで作った料理は、明らかに味が違います。
なぜなら、ストウブは「無水調理」*に特化した設計になっているからです。
普通の鍋だと、煮込んでいる間に水分蒸発とともに、 食材の香りや旨味も一緒に空気中に逃げてしまいます。 換気扇の下が良い匂いになるのは、旨味を捨てている証拠です。
しかし、ストウブは違います。 分厚い鋳鉄製のフタはずっしりと重く、鍋を強力に密閉します。
この重たいフタが、旨味を逃さない「圧力隔壁」 の役割を果たします。 鍋の中は一種の圧力釜のような状態になり、 食材の持つ水分だけで調理が可能になるのです。
水を一滴も加えずに野菜を煮込むと、 「野菜ってこんなに水分を持っていたのか」 と驚愕するはずです。
そして、その水分には野菜の甘みと栄養が凝縮されています。 調味料に頼らなくても、素材そのものの味が濃厚になる。 これが、私がストウブを「調理装置」 と呼ぶ理由です。
2. 旨味を循環させるテクノロジー「アロマ・レイン」

【このセクションのまとめ】
・フタの裏にある突起「ピコ」が最大の特徴です。
・蒸発した旨味を水滴に変え、雨のように食材に戻します。
・これにより、パサつき知らずのジューシーな仕上がりになります。
ストウブの最大の特徴であり、他メーカーとの決定的な違い。 それがフタの裏にある無数の突起、通称「ピコ」です。
調理中、鍋の中で加熱された食材からは、 旨味を含んだ水分が蒸気となって立ち昇ります。
普通の鍋なら、この蒸気はフタを伝って鍋の縁に落ちるか、 蒸気口から外へ逃げてしまいます。
しかし、ストウブのフタ裏に到達した蒸気は、 「ピコ」をつたって凝縮され、水滴となります。 そして、そのまま真下の食材へと降り注ぎます。
これが「アロマ・レイン(香味の雨)」と呼ばれるシステムです。
鍋の中で蒸発した旨味エキスが、再び食材に還る。 この「セルフ・ベイスティング」という循環システムが、 自動的に行われているのです。
想像してみてください。 煮込んでいる間中、旨味のシャワーを浴び続けたお肉を。
パサつくなんてことは物理的にあり得ません。 繊維の奥まで水分が保たれ、 驚くほど「ジューシーでふっくら」とした仕上がりになります。
このテクノロジーこそが、ストウブが世界中のシェフに愛される理由です。
3. 男心をくすぐる「黒」の質感と「マットエマイユ加工」
【セクションの要点】
・ザラザラした「マットエマイユ加工」で焦げ付きにくいです。
・非常に堅牢で、アウトドアでの直火使用も可能です。
・使い込むほどに油が馴染み、育てる楽しみがあります。
ストウブの魅力は、機能だけではありません。 その無骨で堅牢な「ルックス」にも惹かれます。
特に私が愛用している「ブラック」は、 男の道具感を強烈に醸し出しています。
表面はツルツルしたホーロー加工ではなく、 「マットエマイユ加工」 というザラザラした質感になっています。
まるで砂型から取り出したばかりの鋳鉄のような、 野生味あふれる手触り。
この細かい凹凸のおかげで、食材との接点が少なくなり、 驚くほど「焦げ付きにくい」 のです。
お肉を焼くときも、油が凹凸に行き渡るため、 香ばしい焼き目をつけつつ、こびりつきを防いでくれます。 もし焦げ付いても、重曹でゴシゴシ洗えばすぐに落ちます。
そして、とにかく「頑丈」です。
繊細なコーティング鍋のように、傷を気にする必要はありません。 金属のヘラを使ってもビクともしませんし、 なんならキャンプに持ち出して、焚き火に放り込んでもOKです。
炭をフタの上に乗せて、ダッチオーブンとして使うことも可能です。 キッチンでは洗練されたフランス製鍋として。 アウトドアでは頼れるワイルドなギアとして。
使い込むほどに油が馴染み、黒光りしていく様子は、 まさに「革製品を育てる」感覚に近いです。
4. ストウブで何を作る? 男の無水調理レシピ
【このセクションのまとめ】
・水を使わない「無水カレー」は濃厚さが別次元です。
・塊肉のローストポークも、入れて放置するだけで完成します。
・炊飯も得意で、炊飯器より早く甘いご飯が炊けます。
では、実際にこの「装置」を使って何を作るのか。 まずは絶対に試してほしいのが「無水カレー」です。
水は一滴も使いません。
玉ねぎ、トマト、セロリなどの香味野菜をたっぷり入れ、 その上に肉を乗せてフタをする。 あとは弱火でコトコト煮込むだけ。
最初は「本当に水なしで大丈夫か?」と不安になりますが、 30分もすれば、野菜から溢れ出た水分で鍋が満たされます。
このスープには、野菜の旨味が極限まで濃縮されています。 そこにカレールーを溶かすだけ。
一口食べた瞬間、脳にガツンとくる「濃厚さ」 に衝撃を受けるはずです。 「今まで食べていたカレーは水っぽかったんだ」と気づかされます。
次に「ローストポーク」。 スーパーで買ってきた豚肩ロースの塊肉に塩胡椒をし、 表面を焼き付けてから、野菜と一緒にフタをして弱火で放置。
これだけで、ナイフで切る必要がないほど、 フォークで裂ける柔らかさ になります。 「アロマ・レイン」の効果を最も実感できるメニューです。
そして忘れてはいけないのが「炊飯」です。
実はストウブは、最高の炊飯器でもあります。 熱伝導率が高いため、沸騰までの時間が短く、 蓄熱性が高いので、火を止めた後の蒸らし効果も抜群。
お米一粒一粒が立ち、ツヤツヤで甘みのあるご飯 が炊けます。 しかも、浸水時間を除けば、加熱時間はわずか10分程度。 炊飯器の早炊きモードよりも早いのです。
5. 比較:サイズ選びの正解は「20cm」か「22cm」か
【このセクションのまとめ】
・初めての一台なら「20cm」か「22cm」がおすすめです。
・20cmは2〜3人用、炊飯なら3合までいけます。
・22cmはカレーをたくさん作る人や4人家族向きです。
購入時に一番悩むのが「サイズ選び」でしょう。 ピコ・ココット ラウンドには様々なサイズがありますが、 男性のメイン鍋としておすすめなのは「20cm」または「22cm」です。
● 20cm(容量:2.2L) 1人暮らし〜2人暮らしにベストなサイズ。 取り回しがしやすく、日常的に使い倒せます。 お米は3合まで炊けます。 カレーなら4〜5皿分。 「大きすぎず、小さすぎず」の黄金比サイズです。 迷ったらまずはこれを選べば間違いありません。
● 22cm(容量:2.6L) 作り置きをしたい人や、3〜4人家族向け。 カレーをたっぷり作りたいならこちら。 ただし、中に食材を入れるとかなりの重量になります。 片手で持つのは筋トレレベルです。 「大は小を兼ねる」派の人におすすめ。
個人的には、まずは「20cm」から入るのが正解 だと思います。 毎日気軽に使えるサイズ感こそが、 道具を愛用し続けるための重要なファクターだからです。
まとめ:これは「2万円の鍋」ではない。「一生物の相棒」だ
【このセクションのまとめ】
・初期投資は高いが、耐久性を考えればコスパは最強です。
・手入れをすれば孫の代まで使えます。
・料理のプロセスそのものを楽しむためのギアです。
たしかに、鍋一つに2万円以上出すのは勇気がいります。 ホームセンターに行けば、3,000円で鍋セットが買える時代です。
しかし、テフロン加工の鍋は数年でダメになります。 コーティングが剥がれ、買い換えることになります。 それを繰り返すコストと手間を考えてみてください。
ストウブは、手入れさえすれば「半永久的」に使えます。 あなたが使い込み、油を馴染ませ、育てたその鍋は、 やがて子供へ、そして孫へと受け継ぐことができるほどの耐久性があります。
そう考えれば、この価格は決して高くありません。 むしろ、これほどコストパフォーマンスの高い道具はないでしょう。
料理は、単なる家事ではありません。 素材と向き合い、火を操り、旨味を引き出す。 そのプロセスそのものを楽しむ「クリエイティブな実験」です。
その実験を最高に楽しくしてくれる相棒が、 この「STAUB ピコ・ココット ラウンド」なのです。
さあ、あなたも「鍋」ではなく「ギア」を手に入れて、 キッチンの景色を変えてみませんか?



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