導入:たかがキーボードに3万7千円?正気か?

「キーボードに3万7千円!? ゲーム機が買えるじゃん…」
初めてHHKB(Happy Hacking Keyboard)の価格を見たとき、私は本気でそう思いました。
PCに付属してくるペラペラのキーボードでも文字は打てるし、Amazonで探せば2,000円で無線キーボードが買える時代です。
キーボードに35,000円(税込)以上も出すなんて、一部のガジェットオタクか、お金が余って仕方ない人の道楽だと思っていました。
でも、今は断言できます。これ以外のキーボードで仕事をしたくない、と。
もしあなたが、毎日PCに向かっていて「夕方になると肩が重い」「指がなんとなく疲れる」と感じているなら、この記事はあなたのためのものです。
今回は、高級キーボードの代名詞とも言える「HHKB Professional HYBRID Type-S」について、忖度なしでレビューします。
なぜHHKBなのか?「スコスコ」という魔法の打鍵感
まずは簡単にスペックのおさらいです。
私が購入したのは、HHKBの最上位モデル「HHKB Professional HYBRID Type-S」。
- 接続: Bluetooth(最大4台)とUSB-Cのハイブリッド接続
- サイズ: A4用紙の半分程度の超コンパクトサイズ
- 電源: 単3電池2本(あえてバッテリー内蔵にしない「一生使える」設計)
しかし、スペックなんてどうでもいいんです。
HHKBの真髄は、その「スイッチ」にあります。
魔法のスイッチ「静電容量無接点方式」
HHKBには、コンビニのATMや金融機関の業務用端末にも採用されている「静電容量無接点方式」というスイッチが使われています。
一般的なキーボードや、ゲーミングキーボードとは根本的に構造が違います。
電極が接しないため摩耗がなく、耐久性は半永久的。
そして何より、「打鍵感(キーを打つ感触)」が別次元なのです。
なぜ「Type-S(静音モデル)」一択なのか
HHKBには通常モデルもありますが、私は断然「Type-S」を推します。
通常モデルが「カチャカチャ」という音がするのに対し、Type-Sは「スコスコ」という上品で静かな音がします。
この音が、集中力を極限まで高めてくれるのです。
30代デスクワーカーがHHKBにハマる3つの理由
では、具体的に何がそんなに良いのか?
半年間使い倒して感じた、HHKBの「魔力」を3つ紹介します。
1. 指が吸い付く「極上の打鍵感」
こればかりは文章で伝えるのが難しいのですが、あえて表現するなら…
「上質な板チョコを『パキッ』と折るような心地よい抵抗感のあと、スッと指が吸い込まれていく感覚」
でしょうか。
キーを押し込むのに無駄な力が要りません。
指を置くだけでキーが沈んでいくような感覚すらあります。
一般的なキーボードが「指で叩く」ものだとしたら、HHKBは「指で撫でる」もの。
この「スコスコ」という感触が、脳内に快楽物質を出しているんじゃないかと疑うレベルで気持ちいい。
結果、長時間タイピングしても指が全く痛くなりません。腱鞘炎に悩んでいた私が言うのだから間違いありません。
2. 「ホームポジション」から動かなくていい

HHKBを見て最初に驚くのは、キーの少なさでしょう。
テンキーはおろか、F1〜F12のファンクションキーすらありません。独立した矢印キーも(英語配列には)ありません。
「不便じゃないの?」
いいえ、これが「合理的」なのです。
ファンクションキーや矢印キーは、「Fnキー」との同時押しで入力します。
一見面倒くさそうですが、慣れると「ホームポジションから手を動かさずに全ての操作ができる」ことに気づきます。
普通のキーボードなら、矢印キーを押すために右手を右下に移動させ、また戻す…という動作が発生します。
HHKBなら、小指でFnを押しながら右手だけでカーソル移動が完結します。
この「指の移動距離の少なさ」が、疲労軽減と爆速タイピングを生むのです。
3. デスクが広くなり、姿勢が良くなる
HHKBは極限まで無駄を削ぎ落としたサイズ感です。
これがもたらすメリットは、単に「デスクがスッキリする」だけではありません。
マウス(トラックボール)までの距離が圧倒的に近くなるのです。
フルサイズキーボードを使っていると、マウスの位置が遠くなり、どうしても右腕が外側に開いてしまいます。これが肩こりや猫背の原因になります。
HHKBなら、体の正面にキーボードを置き、そのすぐ横にマウスを置けます。
脇を締めた自然な姿勢で作業ができるため、肩への負担が激減しました。
正直、慣れるまでは地獄です(デメリット)
ここまでベタ褒めしましたが、購入前に覚悟しておくべきデメリットも、正直にお伝えします。
独特なキー配列の壁
はっきり言います。
最初の1週間は、地獄を見ます。
特に英語配列の場合、独立した矢印キーがないことや、BackSpaceキーの位置が違うことなど、独自の配列に脳が追いつきません。
「あーーー!また間違えた!」と叫びたくなる瞬間が何度もあります。
「3万7千円も出したのに、使いにくいなんて…」
と、後悔の念がよぎるかもしれません。
しかし、そこが「ふるい」です。
その1週間の「矯正期間」を乗り越え、指が配列を覚えた瞬間、世界が変わります。
自転車に乗れるようになった瞬間のように、無意識に指が動くようになる。
その時初めて、HHKBの真価を理解できるのです。
※どうしても不安な方は、矢印キーがついている「日本語配列モデル」を選ぶのがおすすめです。
価格が高い
約3万7千円。キーボードとしては破格の値段です。
しかし、HHKBは「リセールバリュー(再販価格)」が異常に高いことでも有名です。
もしどうしても合わなかった場合でも、メルカリなどで定価に近い価格で売れます。
つまり、「実質的な試用コスト」は数千円で済むのです。そう考えれば、リスクは意外と低いと思いませんか?
※Amazonなら在庫も安定しており、もし初期不良があっても返品・交換がスムーズなので安心です。
HHKBと一緒に買うべきアイテム
1. パームレスト(必須級)
HHKBは厚みがあるため、机に直置きすると手首が反り返って疲れます。手首の高さを合わせる「パームレスト」は必須です。
2. トラックボールマウス
HHKBのコンパクトさを活かすなら、マウスも動かさない「トラックボール」が最強の相棒です。
HHKBとトラックボールを並べたデスクは、まさにコックピット。
まとめ:1日33円の投資で、一生モノの快適さを
毎日使う商売道具。
仮に37,000円だとして、3年使えば、1日たったの33円です。
1日33円で、毎日の仕事のストレスが減り、入力作業が「快感」に変わり、肩こりや指の痛みから解放される。
そう考えれば、これほどコスパの良い投資はないと思いませんか?
迷っている時間はもったいないです。
あなたが迷っている間にも、あなたの指は悲鳴を上げています。
あなたの指と才能は、もっと贅沢をさせてもいいはずです。
さあ、こちらの沼へようこそ。



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